道に落ちてたもの
いつも横切るマンションの入り口近くに、薄汚れたパンダのキーホルダーが落ちていた。
本当は道の真ん中に落ちていたものを、誰かがマンションの壁に寄りかからせた感じだった。
子供の頃からそういうものを見ると、なぜだか胸の奥がちくちくして、とても悲しい気持ちになった。
街路樹の枝にかけられた人形のついたキーホルダー。公園のベンチの上に置き忘れられたぬいぐるみとか。
寒そうだな、かわいそうだな、ちゃんと持ち主のもとに帰れるのかな……と考えて、とてもさみしい気持ちになるのだった。もう今年30になるのだけれど。
でもそういうふうに思う人が多いから、迷子のその子たちは道のど真ん中ではなく、端っこのほうに寄せておいてあるのだろうか。
今日そのマンションを横切ったら、彼(彼女)はいなかった。
誰かに拾われていたらいいな。