私たちの形
父の誕生日で、会社帰りに食事をした。父の希望で、ベトナム料理。
数年前に父と二人でベトナム旅行をしたときのことを思い出した。
父と話しながら、旅行したり、ご飯を一緒に食べていることを不思議に思う。
私の家族はそれぞれちょっとしたボタンのかけ違いで、結構前からばらばらだ。
でも別に互いを恨み合うこともなく、それぞれがそれぞれで生活している。
もちろん、ばらばらになる前はしんどい時期もあったけれど。
私たちは兄弟星みたいだ。
それぞれ遠い場所にいるけれど、もともと同じ塵から生まれた恒星のよう。
でもそんなゆるい繋がりも、時間の経過とともにほどけてゆくのだろう。
それでも、互いが互いの幸せを願っている。きっと誰よりも、一番。
「いい時間だったよ」帰り際、父は嬉しそうにそう言った。
父の嬉しそうな顔が、私をほっと幸せにする。
帰りの電車で、ゆるやかにほどけてゆく私たちを思ってすこし泣いた。
永遠なんてものはないことはわかっている。
それでも祈っている。お父さん、お母さん、妹に楽しいこと、嬉しいことが少しでも多くありますように。いつまでも。